永嘉路の辺りを散歩していた。
前方からの電気警笛が吵さい。
事故が有ったようだ。
出租車の司機と大媽さんが道の正中で口角をしていて、後ろが堵えているのだ。
受傷人はいないようだ。
看たところ、大媽さんは自行車にも摩托車にも坐っていなかったようだ。
ただ、大媽さんは鶏を手に拿っている。
脖頚子を掴んだまま吵架っている。
警察が五人、後から巡邏車も来て更に五人、制服が最初の五人と異なっていた。
大媽さんは警察に一五一十を説明しようとして、敏捷くその鶏を地面に躺かせた。
そして、その鶏の様子をご看なさいといった感じである。
どうやら事故に遭ったのはこの鶏のようだ。
鶏が躺かされた辺りには確かに羽が散り、血跡が有る。
大媽さんは何度も鶏を躺かせては脖を掴み、躺かせては脖を掴み、
というのを反復して拼命に訴える。
その度に鶏の躯体がぐらんぐらんと揺れる。
第三次に地面に放られたとき、鶏がびくっと動いたのを我は看た。
還、活きている。
一方、司機だって輸けてはいない。
全くの死角だった、ということが劇団演員ばりの手勢によって
遠くからでも理解った。
観衆の中で、10才ぐらいの少年だけが一個人、冷笑している。
其の他は都、困ったような表情をしている。
我は少年と眼が合ったとき、思わず嘿嘿っという笑いが突いて出た。